イタリア人はパンを1日一人あたり230gも食べる世界有数の消費国です。レストランでは前菜からメインディッシュでパンは出ずっぱり。生ハムをのせてパクリ。ステーキの肉汁を染み込ませてパクリ。同じ炭水化物のパスタを食べる時でさえ、スカルペッタといって、お皿に残ったソースをパンでぬぐって平らげます。

 小麦粉100%で作る白いパンは、中世末期まで高級品でした。庶民はライ麦や全粒粉でできた黒っぽい雑穀パンとミネストラ(野菜スープ)を常食とし、対照的に貴族の食卓には、富の象徴として小麦で作った白パンが上りました。今日(こんにち)、健康志向で雑穀パンが人気をよんでいますが、かつて白パンは農民のあこがれだったのです。

パンの歴史は古く、すでにオリエント文明ではパン焼き釜が発明され、エジプトやパレスチナで作られていました。しかし質を向上させ、多様化したのはギリシャ人の功績と言えるでしょう。高いパン作りの技術を持つ彼らは、古代ローマにその恩恵をもたらしました。ローマ当局はパンの重要性に早くから気づき、その安定供給を政策の中心に置きました。紀元前30年には、既にローマ帝国には329の良質の製パン所があり、ローマ市民はもとより奴隷もパンを享受することができたそうです。

また近代のローマでは、小麦が不作の年もパンの価格が高騰しないようコントロールされていました。1980年代くらいまではイタリアではパンの値段は国が管理していました。


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ウンブリアの食卓から 

<パン概論>
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一般的なテーブルパンはパーネ・コムーネ」といい、地方によってその種類は異なります。

 ちなみにわが街スポレートでは「フィローネ」という楕円形をした塩を入れないパン。一つ1kg以上もある大きなもので、買い求める時は、どれくらい欲しいか言って、切り売りしてもらいます。

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