現在、イタリアのパンは地方ごとに多様で、なんと3000種類以上もあるそうです。フランスパンのように洗練こそされていませんが、地方ごとに独特の味わいがあり、とても美味。

イタリア北部ではローズマリーなどをのせ、塩味をきかせた「フォカッチャ」やスリッパの意味を持つ「チャバッタ」は平たいパンです。小さく焼いた「チャバッティーナ」に、ハムやチーズを挟んでもおいしいですね。トリノ発祥の細長いスティック状のパン「グリッシーニ」は、クラッカーのような食感が楽しめます。生ハムを巻くとお洒落なアンティパストに早代わり。

中北部のエミリア・ロマーニャでは大型のライ麦パンやラードを入れて焼くパンがあり、トスカーナ、ウンブリア、マルケの内陸部では、共通して無塩パンが食べられています。(トスカーナではパーネショッコと呼びます。)実の詰まったなんとも味気ないパンですが、パンチの効いた猟師料理や塩気の強いサラミにはピッタリです。
 またローマでは
表面に星形の切れ目が入り、焼き上がればバラの花のような「ロゼッタ」がポピュラー。中は空洞になっているので香ばしい外側を食べます。

 
南部のプーリアでは石釜で焼く、ドーナツ型の巨大でずっしりと目の詰まった「アルタ・ムーラ」のパン。外はこれでもかというくらい焦げているものもありますが、中は気孔が多くしっとりして噛(か)むほどに味がでてきます。ナポリのピザだって、れっきとしたパン。ゴマをのせた風味豊かなシチリアのパンや、極薄でスナックのようなサルデーニャの「パーネ・カラサウ」も忘れてはなりません。

その他にも様々な種類がありますが、一般的に食事用のパンは外の皮が固めで、しっかり焼かれているのが特徴です。イタリア人は柔らかいパンを好みません。あくまでもどっしりと重く、しっかりした歯ごたえを要求します。それは日本のように、おやつや軽食代わりのパンではなく、主食としての役割を担っているからでしょう。ミネストラに浸し、ソースをぬぐっているうちに、フニャっと溶けてしまうパンはお呼びではないようです。

グリッシーニ(左)    チャバッティ(中央)    アルタムーロ(右)


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ウンブリアの食卓から 


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