乾麺の代表選手といえばスパゲティでしょう。千年以上前にアラブから南イタリアに伝わりました。今日見られるような乾燥パスタが普及したのは十六世紀半ばで、ナポリで飢饉に備えるために保存食が必要になったのがきっかけとされています。

19世紀末のモノクロ写真。街の屋台で、手づかみでスパゲティを食べるナポリ人の姿が当時の風俗を物語ります。フォークなんて使いません。小銭と引き換えに、熱々のスパゲティを手づかみで口に運びます。せっかちでナポリ人らしい豪快な食べ方に、思わず微笑。味付けは、すりおろしたチーズのみ。小銭を置いて立ち去るまで五分とかからないことから、当時のファーストフードだったことがうかがえます。

現在ではパスタソースに欠かせないトマトですが、トマトがアメリカ大陸から渡ってきたのは16世紀と遅め。当時、観賞用だったものを100年かけてナポリ人が改良し食用化しました。17世紀頃からパスタソースの材料として使われるようになったそうです。その後18世紀に入り、工業化により麺の量産が可能になります。乾麺の供給が広がるとともに、一気にトマトスパゲティも浸透しました。自ら改良・進化させた乾麺とトマトをセットにして広めたナポリ人は偉大で、かなりの商売上手と言えますね。


 そしてスパゲティ用の四つ股フォークを開発したのも、実はナポリ人です。19世紀、ナポリ公国の王フェルナンド2世は、庶民の食生活にも大いに興味を示し、スパゲティも頻繁に食べたといいます。従来の三股フォークで食べ辛かったことから、宮廷料理人が四股フォークを考案したといいます。


 現在、乾麺は南部に限らず、イタリア全土で食べられています。潮の香りがするシチリアのウニのスパゲティ。トマトソースにガツンとニンニクをきかせたフィレンツェ名物「カレッティエレ」。ジェノバ名物「バジルペーストのトレネッテ」。思い出しても生つばが出てきますねぇ。

ウンブリアの食卓から 
<乾麺の代表、スパゲッティについて>
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■パスタ概論
○乾麺の代表スパゲティ
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