半身のブタをサラミやハムに加工していく作業を、マルケ州のアンコーナ県では「ピスタ」と呼びます。農家で行われたピスタの作業を私も一度だけ、経験したことがあります。

70代のおじいさん、おばあさんが6人ばかりやって来て作業し始めました。まずブタを覆う脂肪をナイフで切り離したら、肩、首・背肉、腰、バラ肉、モモ…と部位ごとに切り分け、加工していきます。肉以外の皮、豚足、舌や内臓は、きちんと選り分けられます。「ブタ一頭解体すれば、捨てるところなし」の(ことわざ)が、まさに目の前で行われています。しかも農家のフツーのおじいさんたちの手作業によって。
  早朝から始めた作業が、終了した
のが午後三時過ぎ。快い疲労感です。ずっと立ちっぱなしだったのにさほど疲れていないのは、彼らの冗談と和気あいあいとしたムードのおかげかしら。親族、ご近所さんが協力し合って行うピスタは、家族や地域の絆を深めるのにも一役かっています。

 豚肉は昔からイタリア人にとって重要なタンパク源でした。冷蔵庫のなかった時代、年中肉が食べられるように、保存の技術が発達しました。
 12−2月の真冬に解体作業は行われ、脂肪の多いサルシッチャは1週間程度、サラミは2、3ヶ月、熟成の必要な生ハムは半年から1年ほどで食べ頃に達します。加工の時期と食べ頃を記した「ブタ暦」なるものも残っているそう。ブタ加工品は、まさに農民たちの生み出した知恵の結晶なのです。


豊かな食生活と地域の絆を育んできた功労者、ブタって本当に偉大ですね!


写真:ピスタの風景(モンテカロット村アグリツーリズモCADABOで)

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ウンブリアの食卓から 
イタリアの基本食材
Dサルミ(ブタ加工) 

■サルミ概論
○まろやかラルドは禁断の味
○ブタ解体作業「ピスタ」
豚肉の加工作業ピスタ
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