イタリアと言えば、やはり『パスタの国』というイメージです。一口にパスタと言っても、国土が縦に長いイタリアの麺事情は、南北でずいぶん違います。北は生麺、南は乾麺を主に食べます。それは気候で麦の栽培種が異なるため。
北部では寒さに強い軟質小麦(小麦粉)が生産されてきました。これに卵を加えて手打ち麺にします。優しい食感と卵の風味が特長で、地方によって形も呼び方も色々です。
一方南部ですが、昔から硬質小麦(セモリナ粉)の栽培が盛んに行われてきました。硬質小麦を水もしくは湯で練り、機械で押し出して完全に乾燥させます。スパゲティやマカロニ、ペンネの類がそう。もちろん南部でもプーリア州のオレッキエッティやカバテッリなどの手打ちパスタは作られてきましたが、原料は硬質小麦です。モチッとした弾力がなんとも魅力★
ちなみにパスタとは小麦で作られた加工品の総称です。パスタはイタリア全土で650種類以上もあると言われています。そのバラエティの多さにはただ驚くばかり。
ハーブのなかでも最近人気急上昇なのが、バジルでしょう。バジルを用いた香りの良い『ジェノバペスト』は、イタリア北西部ジェノバ発祥で、新鮮なバジルにチーズや松の実、オリーブオイルなどを掏(す)りつぶして作ります。パンにぬってよし、スパゲティに用いてよしのこのペーストは、ジェノバと言わず今やイタリア中で愛されています。「ペスト」といえばジェノバペストを指すくらい、その代名詞になっています。
バジルはリグーリア産の柔らかい葉先だけを用い、サルデーニャ産のペコリーノチーズとパルミジャーノ・レジャーノ、この土地のオリーブオイルを使うのが伝統的な製法。地元のこだわり屋さんは、これらの食材を律儀に守り、モルタイオという大理石の乳鉢を使ってペーストにしていきます。バジルを掏りつぶしながら、良質なオリーブオイルを垂らしていくと…フレッシュな香りがあたりに漂い始めます。
ペーストの歴史は意外にも浅く、1830年ごろギリシャからリグーリアに入ってきたバジルをニンニクとオリーブオイルのソースに加えたのが始まりだそう。モルタイオで作るハーブソースは古くからジェノバで盛んだったので、香りの良いバジルを入れてみよう、という思いつきは容易だったことでしょう。
1860年、ジョバン・バッティスタ・ラットが著した『ジェノバの料理人』が出版されました。ラット氏のレシピには貿易で栄えたジェノバらしく、オランダのチーズを使うべしとあります。でも材料や手順に厳密な縛りはなく、作り手の発想にゆだねられていました。
現在でも、ジェノバの各家庭では、いろんなバージョンのペーストが作られています。松の実の代わりにクルミを入れたり、ペコリーノとパルミジャーノの分量を変えたり、隠し味にちょっぴり牛乳を入れたり…。つまり家庭の数だけペーストがあるのです。
バジルはイタリア語ではバズィーリコ(Basilico)といい、ギリシャ語のBasilikon「王の(草)」の意味を持つインド原産のハーブです。古代ローマ時代にギリシャからイタリア半島に伝わりました。もともと温暖な気候を好むので、南イタリアに定着。北部は比較的暖かいリグーリア州(ジェノバ近郊)以外では、栽培に適さなかったようです。
バジルを用いた料理で有名なものに、スライスしたトマトとモッツァレラチーズにバジルをあしらったサラダ『カプレーゼ』やナポリピッツァの王道『マルゲリータ』があります。
イタリアの基本食材 E ハーブ ■ハーブ概論 |
○ハーブの女王ローズマリー |
○バジルとジェノバ・ペースト |